戻る


特集9 編集後記

このサイトを維持するために、大変お世話になっていた骨董商の方が急逝し、先週はお彼岸という事で、供養も兼ねて鞍馬詣でに行ってきた。洛北・鞍馬寺はかつて修験道修行の場であり、比叡山にも近く、多くの僧徒を擁した戦略的に重要な地であった。寺に至る途中の貴船神社一の鳥居の近くには、鬼一法眼古趾の地というものが残っている。鬼一法眼は一条堀川付近に住み、中国の兵法書「六韜」を秘蔵していた陰陽師とされた伝説の人であり、浄瑠璃「鬼一法眼三略巻」に登場する重要人物である。法眼は軍術師範として源氏に代々仕え、その本心から娘を介して義経へ秘伝の書(虎の巻は六韜のうち虎韜に由来)を譲ったのち、今は平家の恩を蒙る身上から自死をもって二君に仕える立場を清算するという話が語られてる。さらに寺の中にも鬼一法眼社という社殿もあり、何かしらの古い伝承が推察される。鞍馬寺ではそんな旧跡を巡り、亡くなった骨董商の方をしのびながら、浄瑠璃ほどドラマティックではなかったけれども、私にとっては虎の巻となったコンテンツを提供して頂いたと感謝した一日であった。

今回、特集9は八代綱太夫の音源を取り上げました。この人も若い頃から多くの音源を残している人です。つばめ太夫、織太夫、綱太夫それぞれの音源については復刻をお願いしたいと思います。さて最近、プロバイダーの容量制限が緩和されましたので、今まで紹介した音源で削除していたものを再開示する準備をしています。次回の特集は、その分遅延を生じる事になりますがご了承下さい。岩波書店にて有益な書籍も手に入るようになってきましたので、音源が少しは参考になればと思っています。今後とも宜しくお願い致します。

  2005. 10. 2 大枝山人