最近、大阪でロボット演劇というものを鑑賞する機会があった。愛知博で見かけたコミュニケーション型ロボットが2体登場し、生活の中で人と共存しているという設定の演劇である。ロボットの生い立ちや詳しい世界観は語られてはいないが、ロボットに心が生じるといった手塚のSF漫画のような世界の一コマを観ているようでもある。主旨は企画書を理解すると、近未来にヒト型ロボットが実用化される時のためロボットに対する人の感性を養うとともに、ロボットのモーションデザインを検討し、人とロボットの距離感を解消しようとする試みということらしい。その検討事項の一つに、人形浄瑠璃やマリオネットにみられる仕草や間の取り方のデザインという項目もある事から非常に興味を持って鑑賞した。もちろん現在のロボットの性能には限界があり、間の形成は一緒に演じる役者やロボット操縦者に負う所が大きい。また人形浄瑠璃は、人らしい仕草・間や感情のデフォルメを表現するのに対して、ロボットのモーションはあくまでも人間が望むロボットらしさの追求である。さらに音声は義太夫語りとは異なる機械的なものという制約もある。しかし、会話と間によって確かにロボットに心があるように感じる瞬間があった。そして劇空間には、ロボットの心的存在感という余韻が残ったのである。昔と異なって農耕や手工業などの手作業にも遠くなり、普段に様々ないきや間というものを体感しなくなった現在において、何もない所から芸能的表現での間の構築を考えるということは面白い趣向である。今回、ロボットにおける疑似人格の形成という極めて現代的な試みの中で間というものが実感できたのであった。
さて、特集におつき合い頂き有り難うございます。使用した音源の状態がよくないので、暫定音源という扱いで紹介しました。なかなか昔の音源の追求も難しいものがあります。また、いよいよ記録映像のデジタル化DVD頒布が始まるのですね。その後にはいったいどのような事が起こるでしょうか? いつも進行が遅れがちで大変失礼していますが、今後とも宜しくお願い致します。
2009. 3. 1 大枝山人