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六代竹本土佐太夫 口絵写真版

郷土研究上方 百廿五号(昭和十六年五月) 土佐太夫と駒太夫を偲ぶ より


特集18 編集後記

 特集では、ここしばらく三巨頭を中心に紹介している。三巨頭というと、乱世を制する天下三分の計を連想する。津の豪快な語り、土佐の艶物語り、古靱の理知的語り、という陣容で大正末期から昭和初期の文楽界を沸せた。その中で六代土佐太夫は、非文楽系の出身ではあったが、独自の人気と実力で三代津太夫紋下の時に庵の位となった。また、大序会という若手勉強会を主催して後進を指導し、様々な人の芸談にも話題に上り尊敬されたことがうかがえる。現在、残されたレコードを聴いても、土佐太夫のなんとも言われぬ声に強く惹かれてしまう。         

 ついでに魏・呉・蜀の天下三分の計は、三国志(三国志演義)として日本でも世代を越えてよく知られている話である。劉備の軍師 諸葛孔明が、天下三分の計を唱え、蜀で小国を興し天下をうかがう。数々の戦略を立て、五丈原での死後も「死せる孔明、生ける仲達を走らす」と魏の司馬懿を惑わした。ご存じのように少し前には、一部が映画化もされているし、かつてNHK人形劇ドラマとして放映され、さらに青少年向きには、漫画やゲームにもなり絶大な人気である。何でも最近は神戸長田に石像までできたそうである。世界観をすぐに共有できることは、新作や復曲物(昔はあったらしいので)の候補のひとつではないかと思う。今さら文楽で取り上げる意味はあるかという向きもあろうが、とにかく年若い観客や新しい外国人客の動員のために間口を広げておくことは重要ではないのか。確かに、古典と間違うほどになった復曲 曽根崎心中を見ても、「世界観を共有しやすい」、「ブランド力がある」、「如何にも文楽らしい」と言うことは興行成功条件のようである。

 特集におつき合い頂き有り難うございます。今回は、六代竹本土佐太夫を取り上げました。三巨頭のひとりのはずなのに、すっかり過去に取り残されてしまった音源ですが、残っているものも非常に少なく大変困ります。もう一回ぐらいは追加できると思いますので少しお待ちください。それから、今年の前半に関係者様の御推薦もあって国立国会図書館データベース・ナビゲーション・サービス(Dnavi)事業に登録されました。HP用サーバー容量が限界に達していたということもあり、急造で大変恐縮ですが、独自ドメインでデータベースサイトを立ち上げました。黎明期資料室にある義太夫SPレコード音源集から移行できます。今後も少しずつでも充実させていきたいと思いますので、宜しくお願い致します。   

  2009. 10. 3 大枝山人