第24回特集は、引き続き二代古靱太夫のニット−盤発売期以前の音源を聞いていただきます。大正6年と大正10年に発売された日蓄盤に、三代清六と組んだ沼津の立場茶屋と平作内前半の音源が残っています。有名な枕の「東路にここも名高き」では産字イに東海道五十三次の意味を込めたものだとか、立場茶屋を特に小揚げと呼び、男徳斎の風であるとかは、よく知られています。ここでの物語は、天の賽の目の采配か、偶然にも東海道で顔も知らない親子兄妹が出会います(のちに別離に至る)。また、杉山其日庵が「沼津の里の段」の記述で三代大隅太夫の苦心研鑽に触れていますが、文庫版の注ではその時の相三味線が三代清六ということです。
音源はレコード1面単位で載せます。旧式の吹込みで補正しておりませんので、ノイズで聞き苦しい点はご了承下さい。特に大正6年発売レコードの内、3面と4面は一部破損しているため、前半部分にポツリポツリと異音があります。暫定音源として御理解の程、宜しくお願い申し上げます。 テキストは「文楽浄瑠璃集」(岩波書店)、「義太夫全集」(日本音曲全集:古書)など、芸談については上演資料集(国立劇場)、「文楽のこころを語る」(文春文庫)、「浄瑠璃素人講釈 杉山其日庵」(岩波文庫)、「文楽の鑑賞」(畝傍書房:古書)などを参考にしてください。