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特集 28 2012年12月〜4月

百年前の若手

          

 先日、国立文楽劇場小ホールにて20年ぶりに「義太夫節SPレコードを聴く会」が開催されました。再開記念として摂津大掾の十種香、九世弥七による奥庭狐火の個人録音、そして新義座の東京仁寿講堂ライブ録音で大井川が紹介されました。十種香によってゆらゆらと時代の彼方へ連れていかれ、弥七秘伝の三味線と古今無双の美声家野沢庄次郎に聞き惚れ、新義座 四世竹本南部太夫と野澤勝平(のちの二代喜左衛門)による白熱した語りと三味線はもう少し聴きたいと思わせました。また、軽妙な解説やスライドショーもあって、聴衆として前回より多い55人程が集まったそうですが、文化遺産の一端をさらに若い世代の方にも興味を持っていただけたら有り難いです。

 さて、特集28は、明治期の出張録音盤の音源を聞いていただきます。聴く会では、75年前の新義座若手太夫の音源が公開されましたが、さらに四半世紀前の100年前の若手太夫です。御存じ山城少掾は、竹本つばめ太夫→ 豊竹古靱太夫→ 豊竹山城少掾と改名しました。つばめ太夫時の明治40年と古靱太夫を襲名した1年後の明治43年の、30歳前後に録音されたものです。妹背山杉酒屋のお三輪、また最近入手したものから千両幟猪名川内のおとわ、そして最後は、三味線の鬼神・三代清六師の櫓太鼓です。同時期の櫓太鼓の演奏に関連しては、鶴澤叶(のちの二代清八)の芸談に師匠とけんかをした逸話が残っています。鶴(豊?)澤兵吉から伝わったものだそうです。以前、昭和期に追善記念復刻されたSP盤の画像を紹介していますが、それの原盤になります。

 音源はレコード1面単位で載せます。旧式の吹込みで補正しておりません。テキストは公演床本集や「義太夫全集」(日本音曲全集)、「浄瑠璃名作集」(日本名著全集)など、芸談その他については「四代越路大夫の表現」、「文楽聞書」、「豊竹山城少掾覚書」(国立劇場)などを参考にしてください。


音源再生をするためには、PCにソフトウエアQuickTimeが入っていることが必要です。

(なければ最新QuickTimeがこちらから無償で手に入ります。QuickTimeインストーラをダウンロード後、インストールしてください。)


竹本つばめ太夫・野澤吉松 妹背山婦女庭訓 杉酒屋の段 1面

ビクター盤 (明治41年6月発売)

ニ代豊竹古靱太夫・三代鶴澤清六 関取千両幟 猪名川の段1面

ライロホン盤 (明治44年5月発売)

三代鶴澤清六 関取千両幟 口上 櫓太鼓 1面

ライロホン盤 (明治44年5月発売)

音源