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特集6 編集後記

 日本では社会的にウチとソトでニつの基準を持つ二重構造が存在している。なんでも日本においては個の自立ではなく、ウチの利益の為に一定の基準を共有する寄り合い組織を作りやすいというのが成立の一つの理由とされている。おそらく今後も風土を保ち日本語を使う国である限り、文化状況を保つため二重構造のバランス取りが続くのではないかと考えている。お察しの通りエンターテイメントの分野でも同様の事があり、最近は世界レベルの多量情報伝達が一瞬でできる環境によってウチの寄り合い組織の基準がぐらついている。特に輸入文化においては顕著であるが、国内基準の葛藤が起きていると考えられる。日本発の文化にしても世界基準になるという誘惑と国内基準を支える基盤の弱体化とで二重構造の仕組みが危ういものとなってきた。かつてのように日常に厳格な水準を保つことができなくなったことも原因かも知れない。ウチの基準を再考する出発点は『如何にローカルな世界で格を保つ動機付けができるのか?』また、『カタルシスをもたらし愛好を持続させる趣向作りができるか?』『本拠地の文化的意義が発揮されているか?』であろうか。そんな中、長い間雑誌や書籍などに復刻が繰り返され基準として語り継がれた浄瑠璃素人講釈がまた世に出るらしい。

 さて秋本番となりました。今年は異常気象で奥山の環境が変わっているのか家の近くにまで冬支度の野生動物がうろついています。こんなことで四季や風土を感じながらも次の文楽公演などを待っているこの頃です。先日はサイトを始めて累計10000をこえるアクセスを頂きました。堅苦しい内容ながら見て頂き有り難うございます。なかなか思いどおりに進まないもので、最近になり、益々更新がぺースダウンしていますが、辛抱強いおつき合いをお願い致します。今回、特集6は七代駒太夫の音源を取り上げました。独特の芸風を持った人で後進が惹かれたことは数々の芸談で読み取ることができます。次回の特集は、十代豊竹若太夫を予定していますのでいま少しお待ちください。今後とも宜しくお願い致します。

  2004. 10. 10 大枝山人