第四回特集は三巨頭のうち六代土佐太夫の音源を聞いていただきます。大正14年頃と昭和12年頃の七代野澤吉兵衛(吉三郎)とのものです。六代土佐は写実の名人・三代大隅太夫の弟子として非文楽系の堀江座、近松座(当時は三代伊達太夫)で、ニ代春子太夫とともに師匠を支えた重鎮です。さらに大隅の死後には、文楽座に移り摂津大掾に弟子入りして二つの芸風に触れることとなりました。政治的なことにも才があったようで、後には土佐太夫を襲名し庵となっています。また、後進に対して天下茶屋の自宅で大序会を催したことは有名な話となっていますが、八代綱大夫や高木氏による四代越路大夫に関する著作などで昭和中・後期を見渡すと六代土佐太夫の芸の影響力という伏流に気づかされます。しかし、その音源がほとんど公開されていないのは誠に残念なことです。音源はレコード1面単位で載せます。また、テキストは浄瑠璃名作集、過去の上演パンフレット付録床本等を参考にしてください。